top of page
執筆者の写真株式会社 RAIN

「隕石」についてのリサーチ

1.「隕石」とは何か


「隕石」とは、地球外から地球の重力に引かれて落ちて来た、個体物質の総称である。その大部分は、火星と木星の間に無数に存在する小惑星帯からのものであるが、彗星の残骸や火星や月の表面物質が、何等かの衝撃によって落ちて来た破片である場合もある。大気を通過する際に、高熱によって「気化」せずに残ったもので、およそ45億年前にできたものと推測されている。


地球には年間3000個以上の隕石が落下する。小さいものは数グラムであるが、最大級は1020年にナミビアで発見された「ホバ隕石」で、66トンにも及ぶ。隕石は眩しい火の玉となって落下し、大きな隕石が地表に激突すると、「クレーター」(隕石孔)と呼ばれる大きな穴が形成される。しかし大きいものが大気との衝突によって爆発して多数の小片となり、数キロから数十キロに及ぶ楕円形を成す「飛散地域」に散らばるように落下する場合もある。隕石は地球だけに落下するのではなく、他の惑星にも同じことが起こっている。


2.「隕石」の鉱物的特徴


隕石と地球上の岩石との大きな違いは、「金属鉄」の有無である。地球上の岩石はほとんど「金属鉄」を含まないが、隕石では「金属鉄」を含まないものの方がまれである。


隕石は、その「金属鉄」の含有量によって「石質隕石」、「石鉄隕石」、「隕鉄(鉄質隕石)」の3種類に分けられる。殆どは含有量の低い「石質隕石」であるが、「石質隕石」は地球上の隕石と見分けがつきにくく、また風化しやすいため、落下するところが目撃されていない限り、見つけることがむずかしい。落下の目撃がなく発見されている隕石は、「石鉄隕石」がほとんどである。


「隕石」全体のうち0.5%を占めるにすぎない「隕鉄」は、90%以上が「金属鉄」で出来ている。風化に強いため、古い隕石も比較的良い状態で見つかる場合が多い。ホバ隕石を始め、最大級の隕石はいずれも「隕鉄」である。ニッケル含有率と構造から、「ヘキサへドライト」(hexahedrite)、「オクタヘドライト」(octahedrite)、「アタキサイト」(ataxite) の3種類に分けられている。


隕鉄の中の「オクタヘドライト」には、「ウィドマンシュテッテン構造」(Widmanstatten pattern) と呼ばれる「正8面体」の組織構造を持っているものがある。これは「隕鉄」が非常にゆっくりしたペースで冷却した場合に起こる現象で、金属鉄を規則的に結晶させたものである。日本では昔日本刀の原料として使われていたこともある。これを「エッチング」という方法で表面処理をすると、その美しい「正8面体」の組織構造が浮かび上がって来る。地球上でこの模様を作り出すことは、不可能であるとされている。


3.市販されている「隕鉄」の種類と名称


「隕鉄」には市販され、入手可能なものもある。大きな「隕鉄」を削り取ったり、もともと小片だったものや大きな「隕鉄」が粉砕した破片を回収して、市場に出している。大抵は「原石」として販売されるので、「品質」についてはほとんど違いがない。しかしその「価値」には大きな差がある。宇宙空間から単体で飛来し落下したものは、「インディビジュアル」と呼ばれ、価値が高い。一方空中で爆発して小さく砕けたものは、価値が低くなる。


「隕鉄」は地球上でできた石ではないが、「天然石」であることに変わりはないので、「パワーストーン」の中に数えられている。また上記のような美しい「ウィドマンシュテッテン構造」を持つオクタヘドライトがあり、宇宙からの石という神秘性も加わって、アクセサリーやキーホルダーなどにも加工されている。


入手できる「隕鉄」には、次のような種類がある。それぞれの名称は、その隕鉄が落下・発見された場所の地名に由来している場合が多い。


オデッサ隕石

1922年に米国テキサス州オデッサの南西エクター群で発見された。約5万年前に落下したと考えられている。鉄の含有量が多いため、酸化の度合いによって「黒色」・「茶色」・「銀色」の3色が存在し、大きいものは持つとかなり重い。回収量が多いため、比較的リーズナブルな価格で入手することができる。


シホテアリン(シホテアリニ)隕石

1947年にロシアのウラジオストック北部のシホテアリンに落下した多数の隕鉄である。落下物には2種類あった。ひとつは早い段階で隕石本体から割れて大気圏を落下したと思われ、表面が完全に溶解し、「サムプリント」(thumb print) と呼ばれる親指で押したような穴が開いている。もうひとつは落下時に空中で爆発したか、地表との衝突で粉砕したと思われる破片である。


ガンポ・デル・シェロ隕石

1570年にアルゼンチンのチャコ州に落下し、1969年に発見された。「ガンポ・デル・シェロ」は、スペイン語で「空の草原」を意味している。艶のある鉄色で、表面に大気圏を通り抜ける時にできた無数の穴が開いているのが特徴である。


キャニオン・ディアブロ隕石

15万年から500万年前の間に地球に落下して来た、米国アリゾナ州のバリンジャー・クレーターを作った隕石のひとつと考えられている。1891年にクレーターから5-6 km 離れたディアブロ峡谷で発見された。鉄・ニッケル合金と硫化鉄と主成分としているが、衝突時の衝撃で生まれたプラチナと黒ダイヤモンドが微量含まれている。


ギベオン隕石

1836年に南アフリカのナミビアにあるナミブ砂漠の奥地で発見された。表面は大気との激しい摩擦によって生じた皮膜に覆われ、飛行の跡が見られる、美しく珍しい隕石である。ギベオンに酷似した隕石に、「ムオニオナルスタ」がある。


アグダル隕石

2000年にモロッコのアトラス山脈、アグダル近くで発見された、比較的新しい隕石である。隕石らしいフォルムと、切断面に見られる「ノイマンライン」と呼ばれるオーロラのようなラインが特徴である。


イミラック・パラサイト隕石

約260万年前に南米チリのアタカマ砂漠にあるイミラック村に落下し、1822年に発見された。断面をスライスすると、鉄・ニッケル合金とカンラン石(オリビン)が混ざり合った、美しいコントラストの模様が浮かび上がる、希少な隕鉄である。


テクタイト

テクタイトは「隕鉄」ではなく、その関連物質である。隕石衝突時の熱や爆発によって作られる「天然ガラス」で、衝突したクレーターの周囲に広く分布する。チェコで産出される「モルダバイト」はその代表である。


このリサーチのために役立った資料は次の通りである。

Meteorite. https://www. Newscientist.com/definition/what-is-a-meteorite


閲覧数:117回0件のコメント

Comments


bottom of page