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太陽系の8惑星:その特徴と神話

1.太陽系の8惑星とは何か


宇宙には「恒星」と呼ばれる自ら光輝く天体が無数にあり、「太陽」はそのひとつである。「太陽系」とは、その「太陽」と、それを中心に回っている天体を総合したものである。「太陽系」には8個の惑星が含まれ、太陽からの近さの順に、「水星」、「金星」、「地球」、「火星」「、木星」、「土星」、「天王星」、「海王星」が位置している。以前は「冥王星」も「太陽系」の惑星として数えられていたが、大きさや軌道が他の惑星と異なるため、現在では「準惑星」として分類し直されている。


2.8惑星の特徴


8つの惑星にはそれぞれ次のような特徴があり、独特の外観を呈している。


①水星

太陽に最も近い。その近さのため、表面の平均温度が170度前後もある、灼熱の惑星である。重力が小さく、大気がほとんどない。


②金星

地球からはとても美しく見えるため、「ヴィーナス」などと呼ばれ、女性らしいイメージがある。しかし実際には、表面の平均温度は460度と過酷な環境で、大気には「スーパーローテーション」と呼ばれる、非常に激しい風が吹き荒れている。


③地球

太陽系で唯一、生命の存在が確認されている天体である。豊富な水と大気に包まれ、生き物が存在するのに適している。しかし地球の歴史は決して平坦ではなく、幾度も生命の絶滅が繰り返されて来た。


④火星

赤く見えるこの惑星には、かつて水があったと考えられている。今の地球と似た環境であったのかもしれない。将来、人類が訪れる可能性が高い天体のひとつである。


⑤木星

太陽系の中で一番大きく、大気ガスでできた惑星である。赤道付近には「大赤斑」と呼ばれる巨大な大気の渦が見える。渦の大きさは地球の3個分もある。いまだに火山活動を続けている「イオ」や、液体の水が存在する可能性のある「エウロパ」など、4つの大きな衛星を有している。


⑥土星

木星と同じく、水素が主成分の大気ガスでできている。ほとんどが氷の小片から成る恒常的な環が、その周りをぐるりと取り巻いている。望遠鏡を使うと、地球からその環を観察することができる。


⑦天王星

自転軸が98度も傾いていて、ほぼ横倒しの状態で回転しているのが特徴である。大部分は水やメタン、アンモニアなどが固まったもので構成されているが、表面はメタンを含んだ大気に覆われていて、青く見える。


⑧海王星

太陽のまわりを約165年もかけて公転している。天王星と同様に、表面にはメタンを含んだ大気があり、天王星よりも深いコバルトブルーに見えるのが特徴である。表面の平均温度はおよそマイナス230度という、酷寒の惑星である。


3.8惑星にまつわる神話


8惑星の英語名は、「地球」を除きいずれもラテン語で、「ローマ神話」の「神」の名前に由来している。


この由来の説明は、古代フェニキア人が農作物の収穫時期や航海の目安などの「暦」の役割として、星の並びに関係性を認めた「星座」を考え出した歴史に遡る。彼らは「星座」をギリシャに伝え、ギリシャではその中でもひときわ明るく見える惑星に、「ギリシャ神話」の尊い神の名前を付けた。その後ローマがギリシャを征服した際に、その文化を取り込んで、「ギリシャ神話」を修正改変した「ローマ神話」を作った。そのような経過をたどって、8惑星にはラテン語の「ローマ神話」の神に由来した名が付けられている。


しかし8惑星には、名前のみにとどまらず、次のような「ギリシャ・ローマ神話」の神々のエピソードもまた、「惑星の神話」としてまつわることになった。


①水星

英語名は「Mercury(マーキュリー)」 で、ローマ神話の商人や旅人の守護神 「Mercurius(メルクリウス)」に由来している。


メルクリウスはほっそりした若者で、羽の付いた靴「タラリア」を履き、羽の生えた帽子「ペタトス」をかぶり、2匹の蛇が絡まり羽が生えた杖「カドゥケウス」を手にしている。

生まれたその日から盗みを働くという「生粋の大泥棒」だが、神々の間でもずば抜けて頭が良く、機敏で、人当たりも良かった。父親である主神ユピテルはそのような我が子を贔屓にし、冥界、地上界、天界を往復する「伝令」という大任を与え、重宝がった。メルクリウスは死者の魂を冥界に連れて行ったり、冥界から死者の魂を地上に連れて戻す役割も担っていたことから、「旅人の守護神」とされている。


「水星」は公転が速く、天空を素早く移動するので、明け方と夕方の短時間しか見ることができない。それがすばしっこいメルクリウスのイメージと似ていたため、それに由来した「マーキュリー」という英語名が付けられた。


②金星

英語名は「Venus(ヴィーナス)」 で、ローマ神話の愛と美の女神 「Venus(ウェヌス)」に由来している。


ウェヌスは女神の中で最も美しく、神々でさえも心を奪われずにはいられないほどであったとされている。愛と美の女神として非常に有名である。しかしそれはプラトニックな種類ではなく、奔放で豊穣な「愛」を意味していることは、絵でも彫刻でも、彼女が常に全裸かそれに近い妖艶な姿で表されていることで,充分にうかがい知れる。彼女自身鍛冶の神「ヘパイストス」の妻でありながら、数多くの愛にいそしみ、愛人との間に何人もの子供がいた。悲劇も起こしたが、最後は夫の元へ戻った。ヘパイストスはそのようなウェヌスを深く愛し、許し迎え入れたと言われている。


③地球

地球の英語名は「 Earth(アース)」 で、古代英語の Eorthe(エオルテ、「大地」の意味)に由来している。「太陽系」の中で、ラテン語に由来する名前を持たない唯一の惑星である。

ローマ神話では、地球はTellus (テルース)又はTerra(テラ)と呼ばれる「大地の女神」に象徴されているが、彼女についての固有の神話は存在していない。


④火星

英語名は「 Mars(マース)」 で、ローマ神話の戦争の神「 Mars(マルス)」に由来している。


マルスは、ギリシャ神話では好戦的な神として描かれている。しかしローマ神話では、戦いの神ではあっても、争いを好む野蛮な神ではなく、戦いに挑む勇敢な神としてあがめられ、大変人気のある神であった。マルスは最高神ゼウスの息子で、神々の中で1・2を争うほどの美男であるとされた。金星である「ウェヌス」とは愛人関係にあり、彼女との間に「ポボス」と「ディモス」の2人の息子がいる。


火星の表面は赤いので、戦火や血のイメージと結びついて、軍神マルスの名前が付けられている。火星の2つの衛星「ポボス」と「ディモス」は、彼の息子の名にちなんだものである。


⑤木星

英語名は「Jupiter(ジュピター)) で、ローマ神話の主神「 Jupiter(ユピテル))に由来している。


「ユピテル」(ゼウス)とは、「明るく輝く空」を意味している。最高神で、全知全能の神である。神々の頂点に君臨し、運命も超越する神としてあがめられていた。雷を武器とし、一振りで宇宙を焼き尽くすという最強の武器「ケラノス」(雷てい)を手にしている。


ユピテルの前には、天界は彼の父親「サートゥルヌス」が支配していた。しかしサートゥルヌスは、将来息子が自分を超越するという予言に耐えられず、生まれて来た5人の息子達を次々に飲み込んでしまった。サートゥルヌスの母ガイアによって救われたユピテルは、成人した後、父に嘔吐を催す物を飲ませ、腹の中に溜め込んでいた息子達を吐き出させた。そしてその兄たちや他の神々を率いて「巨神族(ティターン)」と闘い、勝利を収めるに至った。兄たちとは公平に「くじ引き」でそれぞれの統治する領域を決め、ユピテルは天界を治めることになった。 


そのようなエピソードから、ユピテルは「法」と「国家」の守護神とされ、「輝く父」と呼ばれた。古代ローマ人は、都市ローマがユピテルによって守られていると信じていた。


太陽系で一番大きな惑星である「木星」が、主神であり最高神であるユピテルにその守護を任せられているのは、もっともなことではないだろうか。


⑥土星

英語名は Saturn(サターン) で、ローマ神話の農耕神 Saturnus(サートゥルヌス)に由来している。


サートゥルヌスは木星の守護神ジュピターの父で、上記のようなエピソードを有していた。しかし同時に「農耕の神」という重要な役割を担い、当時未開の民であった人間に、初めての農耕や葡萄の栽培法を教えたとされる。古代神話の最長老であっため、収穫用の長い「鎌」を持った老人の姿で描写されることが多い。


サートゥルヌスまた法を発布して、古代社会の富と平和の「黄金時代」を築いたという。そこから文化や富の神ともされ、「クアドリガ」(4頭の並行する馬に牽かせた、戦車競走用のチャリオット)に乗った勇ましい姿で表されることもある。


⑦天王星

英語名は「 Uranus(ユラナス)) で、ローマ神話の天空神 「Uranus(ウーラノス)」に由来している。


「ウーラノス」とは「天」を意味し、ウーラノス自身が「天」そのものを神格化した存在である。原初の主神であり、全宇宙を最初に統治したとされる。上記の土星の守護神サートゥルヌスの父であり、木星の守護神ユピテルにとっては祖父に当たる。


古代人は、空は星が散りばめられた「真鍮のドーム」であると信じていた。天はもともと暗いもので、昼の光(ヘーメラー)は天の上の清明な大気(アイテール)にあるとされていた。ウーラノスは「星散りばめたる」という称号を持ち、全身に銀河をまとった「宇宙の神」として考えられていた。夜に暗くなるのは、そのウーラノスが「大地」である妻ガイアと交わるために、「ニュクス」(夜)を伴って地上に降りて来るためであると解釈された。地上の湖や海は、ウーラノスが空から降らせた雨でできたものとされた。


⑧海王星

英語名は Neptune(ネプチューン) で、ローマ神話の海の神 Neptunus(ネプトゥヌス)に由来している。


ネプトゥヌスは海の神で、最高神ユピテルに次ぐ圧倒的な地位と強さを誇っていた。海洋の全てを支配し、全大陸すら彼の力によって支えられていた。手にしている三又の鉾は「トリアイナ」と呼ばれる最強の武器で、これを使えば嵐や津波を容易に引き起こすことができ、地震を起こして大陸を沈ませることもわけのないことであった。またこれで万物を木端微塵に砕くこともたやすく、ネプトゥヌスは山脈を真っ二つに引き裂いて川の通り道を作ったり、山々と大地を深く切り抜いて海中へと投げ、島を作ったりした。


彼の宮殿は海底にあり、珊瑚と宝石で飾られているとされていた。青銅の蹄と黄金のたてがみを持った半馬半魚の海馬「ヒッポカムポス」の牽く戦車に乗り、怪物たちを従えて海を駆け巡るネプトゥヌスの雄々しい姿は、多くの絵画や彫刻に表されている。\


このリサーチのために役立った資料は次の通りである。


The Eight Planets. https://sciece.jrank.org/kids/pages/224/EIGHT-PLANETS.html


Planet Facts-The Planets In Order. https://theplanets.org/planets/


How Did the Planets Get Their Names? -The Spirited Nature.

https:/www. scienceabc.com/nature/universe/how-did-the-planets-get-their-names.html


Names of All The Planets and Moos of Our Solar System. https://www.theplanetstoday.com/names_of_planets_and_moons_solar_sysetm.html


The Gods and Goddesses of Ancient Rome. https://www.nationalgeographic.org/article/gods-and-goddesses-ancient-rome/


Who Were The Main Roman Gods and Goddesses? https://strictlyrome.com/roman-gods-and-goddeses/


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